魔法のしっぽ3
シャオンの家の周りには、魔法所を売っている店や調合につかう薬品店まである。錬金術の店を出すにはぴったりの立地条件だ。
シャオンが開店にそなえて、掃除をしていると、フィルスがやってきた。
「ねぇ、シャオンいないの?」
シャオンは大きい、箱を持ちながら、言った。「なーに、フィルス。ちょっと、この荷物片付けるの手伝って」
「しょうがないなぁ」
二三歩動かして、荷物をドカっと置いて、フィルスが言った。
「なぁ、シャオン。錬金術の店を開くんだって? サーラが言ってた」
「うん、そうなんだ。今、片付けて大変なの」
「手伝うよ。俺もそのつもりできたから」
「ありがとう。フィルス」
そして、二人が片づけをてきぱきとしていると、女の子がやってきた。
「フィルス、何やってるの? こんなとこで?」
「イムちゃん。見ての通り、片付けてるんだよ。イムちゃんも手伝ってよ。この荷物重いんだから」
イムと名乗る女の子は、年の頃は同じくらい。背がスラっとしていて、髪の長い女の子。フィルスによると街の宿屋の娘だそうだ。
「やーよ、フィルス。こんな重い荷物持ったら、怪我しちゃうわ」
「誰、この子? 知らないわ。フィルス紹介してよ」
「シャオン。この子はイムって言うんだ。イム、この子はシャオン」
「よろしく、イムちゃん」シャオンは右手を差し出す。
イムは、その手を無視し、「こんな重そうな荷物持てないわ」と愛想なしに立ち去っていった。
「なんだよ、イム。愛想悪いなぁ」
「なんか、私、あの子を傷つけるようなことしたかな?」
「そんなことないよ。シャオン。イムちゃんいつもそんなことないのに、今日は機嫌が悪かったみたい」
「ふうん・・・、」
二人は、がんばって片付けた後、シャオンがお茶を入れ、近所のおばさんからもらった特製のクッキーをほおばっていた。
「失礼しまーす」
入ってきたのは、知らない男の人。年は20歳くらい髪の毛は短く、ちょっとチンピラっぽい。
「な、なんですか? あなたは?」
「この当たりで商売させてもらってる、シバーってもんだ」
「シバー?」
「ここで何か店を開くそうで、もし、材料とか必要な時は、言ってくれい」
「は、はぁ」
それだけ言って、シバーと名乗る男は立ち去った。
「なんなの今の?」
「さぁ・・・、」
「さ、クッキーも食べたことだし、今日はこれで終わりますか」シャオンは言った。
「そうだね。随分片付いたもんね」
「これ、少ないけど給料」
「え、いいの?」
「うん、これから、材料探しにも行ってもらいたいしね」
「えー、俺、スライム倒すのがやっとだよ?」
「いきなり、険しいところに行けって言わないから、大丈夫よ」
「そっか、俺も剣の修行するね?」
「私も魔法の研究するね。一緒にがんばろうね?」