空の時 10



  その次の日、ある決断をした。

いない人のことは、保留して、今ある自分を大切にしようと思った。

そう、千春の告白を受け入れることだ。


 その日は、雨が降っていた。

屋上は無理だし、千春の教室に行った。

千春は俺の登場に驚いていた。

「先輩、どうしたんですか?」

「うん、雨だし、別の場所を探そうと思ってね」

「そうなんですか。」

「行こうか?」

「はい」

千春は、お弁当を抱えて、俺についてきた。


 俺は、多目的室に入り、千春を促した。

「千春ちゃん。ここでいい?」

「はい。じゃあ、お弁当広げますよぉ。今日は先輩の好きなクリームコロッケ入れてきたんですよ」

「ありがとう、千春ちゃん。俺、千春ちゃんと・・・、」

「なんですか?」

「千春ちゃん、俺と付き合って」

千春は、弁当箱を落とした。

「先輩・・・、」

「俺と付き合って」

「先輩、信じていいんですか?」

俺はにこりと微笑み「いいよ」と返した。


 千春は言った。「先輩、付き合ってるんですよね?」

「そうだよ」俺は返した。

「ねぇ、先輩。一緒に帰りませんか?」

「うん、いいよ」


 そして、俺達は、千春のクラスで待ち合わせ、一緒に帰ることに決めた。

最初は何度か冷やかされることがあったが、だんだんと浸透した、それが、自然になってきた。

お互いがお互いのクラスに行く。

それは、楽しかった。


「先輩。明日、デートしませんか?」

「いいねぇ」

「私、見たい映画があるんです」

「どんなの?」

「ラブストーリーです」

「へぇ、」

「曽田祐樹と夏島美奈がでるんです」

「楽しみだな」

「明日、駅前ですよ?」

「うん」