空の時 11


 

 待ち合わせの場所に行くと、すでに千春はいた。

「先輩、ここですよ〜」

「ごめん、待った?」

「ううん。じっとしてられなくて、きたんです。まだ、待ち合わせ時間より早いし、先輩、悪くないですよ」

「そっか。ありがとう」

「じゃあ、行こうか?」

「はい」


 売店で、何か買おうとしたら、千春に言われた。

「音立てたら、耳障りですよ。見た後にしませんか?」

「あ、そうだね。千春ちゃん、いつもそんなこと考えてるんだ」

「先輩、惚れ直しました?」

「あはは、うん」


 映画は、悲劇で終わるストーリーだった。

千春は少し涙ぐんでいた。

周りは、女の子を慰めるために、抱擁やキスをかわしていた。

抱きしめたいと思った。だけど、何かためらわれた。

ハンカチを渡し、大丈夫?と声をかけた。

すると、千春が抱きしめてきた。

「千春ちゃん・・・・!」

「少し、このままでいて下さい」

「う、うん」

 千春の甘い香りが胸をつく。

思わず、力がはいってしまう。


 そして、映画館を出た。