待ち合わせの場所に行くと、すでに千春はいた。
「先輩、ここですよ〜」
「ごめん、待った?」
「ううん。じっとしてられなくて、きたんです。まだ、待ち合わせ時間より早いし、先輩、悪くないですよ」
「そっか。ありがとう」
「じゃあ、行こうか?」
「はい」
売店で、何か買おうとしたら、千春に言われた。
「音立てたら、耳障りですよ。見た後にしませんか?」
「あ、そうだね。千春ちゃん、いつもそんなこと考えてるんだ」
「先輩、惚れ直しました?」
「あはは、うん」
映画は、悲劇で終わるストーリーだった。
千春は少し涙ぐんでいた。
周りは、女の子を慰めるために、抱擁やキスをかわしていた。
抱きしめたいと思った。だけど、何かためらわれた。
ハンカチを渡し、大丈夫?と声をかけた。
すると、千春が抱きしめてきた。
「千春ちゃん・・・・!」
「少し、このままでいて下さい」
「う、うん」
千春の甘い香りが胸をつく。
思わず、力がはいってしまう。
そして、映画館を出た。