「美咲。どうして、東京に?」
「ちょっと、手続きにね」
「そっか」
「それより、泣きそうな顔してどうしたの?」
「ってか、その口調、どうしたんだよ?」
「変えたの。前に言われたでしょ?」
「う、うん」
「で、どうしたの?」
「なんでもないんだよ」、俺は無理に微笑んだ。
「彼女に振られたの?」
「どうして、千春のことを知ってるんだ?」
「前にメールしてたじゃない?」
「そんなこと、書いてないよ」
美咲は笑った。「かまかけてみたの」
俺は、しまったという表情をした。
「いいのよ。別に私達、付き合ってたわけじゃないし」
そう聞くと、少し淋しい気がする。
「で、彼女とどうしたの?」
俺は、ことのいきさつを話した。
「そっか、まずい時に電話したね。今から、誤解を解きにいこうよ?」
「い、いいんだよ」
「え、どうして?」
「俺は、美咲のことがずっと気にかかってる」
「あんた、何言ってるの? 今付き合ってるのは、その千春って子よ? ふざけないで!」
「ご、ごめん」
「とにかく、その子の家にいきましょう。話はそれから」
「う、うん」
空を見あげると模崩れかけていた。