空の時 16




 俺は公園でタバコを吹かしていた。

タバコの銘柄はおっさんくさい、ハイライトのメンソール。この頼りない正確をどうにか落ち着かそうと思ったのだ。でも、なかなか、うまくいかない。

 公園には、5歳ぐらいの男の子と母親がいた。

男の子は、オーバーオールで頬にこげ茶色の汚れをつけていた。

母親は、妊娠しているのか、ピンク色のマタニティドレスを着ている。動きは、子供がいるからだろう。少し鈍くゆっくりとしている。「翔太、早く帰らないと、塾に遅れるわよ」

「今日は、休む。だって、けんちゃん塾行ってないのに、僕だけなんていやだよ〜」と男の子が言う。

 今時の子供は、5歳から、塾に通うのかとなんとなく思っていた。

違う、今はそれ所じゃない、美咲が千春ちゃんになんて言ってるか気になっているんだと頭をぶるぶると振るわせた。

 一方、美咲は、千春と話しこんでいた。

「あなたが千春さんね?」

「冷静にしたって、無駄だよ。私、先輩のこと入学する前から好きだったんだから!」と千春は、顔を真っ赤にしながら言った。

「私と雅人って、あなたの思うような関係じゃないのよ。私が転校する少し前に会っただけだから」美咲は冷静に言う。

「でも、先輩は、あなたのことを思ってるんだもん。デートでどんなに抱きしめあっても、あなたのことだけ思ってる!」

「どうして、そう思うの?」

「先輩の目よ。先輩、私とあなたを重ねてるのよ」

「それ、雅人から聞いたの?」

千春は消えそうな声で呟いた。「先輩、私を見てても、他のこと気にしてるから、それは、きっと、あなただから。あなたも先輩のこと好きなんでしょ?」怒っていた、千春の声は、涙ぐんだ声になっていた。

「分からないな。そんなの考えたことない」

「ほんと?」

「ええ、ほんとよ」 美咲は、取り繕っていた。本当は、雅人のことが気になっていたのだ。でも、いつも、会える訳ではないのだ。今、好きと言ってはいけない。そう思っていた。

「だから、泣かないで、雅人と話そう。話し合えば、分かるかもしれないから」

  あれから、どれくらいの時間が経っただろう? 公園のベンチは冷え込んでいた。俺は、立ち上がったり、座ったりで忙しくしていた。

美咲は、俺のことなんとも思ってないのか? 千春ちゃんは、かわいいし、大切にしたいと思ってる。だけど、愛してるじゃない。悪いって分かるけど、今、美咲を目の前にしたら、そんな気持ちも揺らいでしまう。俺は、美咲を追っていたのだから。

 

 「千春さん。いい?私は、あなたと雅人の恋のキューピッドになりにきたんだから」美咲は、穏やかな表情で言った。心の中にある激しい恋心を隠しながら

千春は、明るく答えた。「ほんと?ほんとだね?」

「ええ、そうよ。じゃあ、雅人に連絡するね」三咲は、携帯を取り出そうとした。

「待って、直接呼ぶから」

「うん」