空の時 7


 

 そして、美咲が転校していった。

俺は、美咲との最後の屋上に上がった。

誰もいない。

美咲の吸っていたタバコをふかしてみた。

当然ながら、むせた。それでも吸い続けた。どうしたら、美咲みたいにかっこよく吸えるのかといろいろ試した。

1週間もすると、タバコにも慣れ、いつの間にか屋上はタバコを吸う場所になっていた。


 クリスマスも知らない間に過ぎた。

俺は先輩と呼ばれる年齢になっていた。

いつものように、タバコを吸いに屋上に行った。

すると、こほ、こほとむせる声が聞こえた。辺りを見回すと、弁当を広げる女の子がいた。

「あ、ごめん、すぐ消すね」

俺は、タバコをもみ消し、女の子の方を向いた。

身長は、160くらい。ルックスもいい。

「あの、ここで、タバコ吸ってるのね先輩。へぇ、先輩がねぇ〜」

「あ、うん。タバコはちょっと前からって、先輩?」

「あ、やっぱり?」

「う、うん」

「私は、吉田千春。千春って呼んでね」

「あ、うん」

「1年の頃、先輩、野球部だったでしょ? でもいつの間にか見かけなくなって」

「ああ、そんなこともあったな」

「そんなことって、先輩、かっこよかったですよ。一生懸命にしてて」

「そ、そう?」

「私、練習見てて、一目ぼれしたんです」 

「へぇ〜。って、ええー!?」

「それで、この高校受けたんですよ?」

「あ、そう」

「吉田さん。いきなり告白って、勇気いらない?」

「あ、千春って呼んでって言ったじゃん」

「ち、千春・・・ちゃん」

「もーう。それでいっか」と、微笑む千春。

「で、勇気は?」

「いりませんよ?」

「そういうもんかぁ」

「先輩、いつもここで、タバコだけ吸うんですか?」

「うん、母さん死んだし、作ってくれる人いないからね」

「じゃあ、私作ってきていいですか?」

「そんなの悪いよ」

「あ、その目、ちょっとほしいなって思ったでしょ?」

「あ、ちょっとだけね」

「じゃあ、明日、屋上にいてください。雨でもですよ?」

「いや、困るよ」

「そしたら、先輩のクラスに行きます」

「もっと、困る」

「じゃあ、屋上にね」

「う、うん」


 そうして、千春はかけていった。

衝撃の告白をあそこまで、簡単に言ってしまう千春。半ば強引だけど、悪くない。

少し、自分に自信が持てた。