そして、美咲が転校していった。
俺は、美咲との最後の屋上に上がった。
誰もいない。
美咲の吸っていたタバコをふかしてみた。
当然ながら、むせた。それでも吸い続けた。どうしたら、美咲みたいにかっこよく吸えるのかといろいろ試した。
1週間もすると、タバコにも慣れ、いつの間にか屋上はタバコを吸う場所になっていた。
クリスマスも知らない間に過ぎた。
俺は先輩と呼ばれる年齢になっていた。
いつものように、タバコを吸いに屋上に行った。
すると、こほ、こほとむせる声が聞こえた。辺りを見回すと、弁当を広げる女の子がいた。
「あ、ごめん、すぐ消すね」
俺は、タバコをもみ消し、女の子の方を向いた。
身長は、160くらい。ルックスもいい。
「あの、ここで、タバコ吸ってるのね先輩。へぇ、先輩がねぇ〜」
「あ、うん。タバコはちょっと前からって、先輩?」
「あ、やっぱり?」
「う、うん」
「私は、吉田千春。千春って呼んでね」
「あ、うん」
「1年の頃、先輩、野球部だったでしょ? でもいつの間にか見かけなくなって」
「ああ、そんなこともあったな」
「そんなことって、先輩、かっこよかったですよ。一生懸命にしてて」
「そ、そう?」
「私、練習見てて、一目ぼれしたんです」
「へぇ〜。って、ええー!?」
「それで、この高校受けたんですよ?」
「あ、そう」
「吉田さん。いきなり告白って、勇気いらない?」
「あ、千春って呼んでって言ったじゃん」
「ち、千春・・・ちゃん」
「もーう。それでいっか」と、微笑む千春。
「で、勇気は?」
「いりませんよ?」
「そういうもんかぁ」
「先輩、いつもここで、タバコだけ吸うんですか?」
「うん、母さん死んだし、作ってくれる人いないからね」
「じゃあ、私作ってきていいですか?」
「そんなの悪いよ」
「あ、その目、ちょっとほしいなって思ったでしょ?」
「あ、ちょっとだけね」
「じゃあ、明日、屋上にいてください。雨でもですよ?」
「いや、困るよ」
「そしたら、先輩のクラスに行きます」
「もっと、困る」
「じゃあ、屋上にね」
「う、うん」
そうして、千春はかけていった。
衝撃の告白をあそこまで、簡単に言ってしまう千春。半ば強引だけど、悪くない。
少し、自分に自信が持てた。