空の時 8


 

 翌日、千春が弁当を作ってくれる。

千春が来るのをタバコをふかしてまっていた。

ガタっとドアを開ける音と共に、千春が元気よくやってきた。

「せんぱ〜い。遅れてごめんね〜。くるとき、クラスの子に冷やかされたから」

「あはは・・・」俺は、笑うしかなかった。


 千春は、「楽しみにしてましたか?」

「んー、ちょっと」と指を作ってみた。

「お母さんに教えてもらいながら、作りましたよ」

「それって、本当はお母さんが作ったとか?」

「えへへ。じゃあ、出すね」

見ると、かわいい弁当がきれいに並んでいた。

「おお、うまそ〜。じゃ、俺も出すね」と、お茶を2本出した。もちろん、購買部で買ったものだ。

「先輩、きがきく〜」

「お弁当には、お茶だもんな」


 そして、クラスメートにどう茶化されたなどと話しながら食べた。


 別れ際、千春は言った。「先輩、好きな人いますか?」

「うん。でも、遠いとこにいる」

「先輩、私、その人に負けませんから」

「千春ちゃん・・・、」

俺は、一人残された。


 次の日、俺は、屋上に行かなかった。

ところが、放課後、俺のクラスに千春がきた。


 「ち、千春ちゃん・・・」

「先輩、どうしてきてくれなかったんですか?」

「千春ちゃんの、笑顔を曇らせてしまうから・・・、」

「・・・、先輩、お弁当、無駄になるから、きてください。」

「千春ちゃん・・・」

「近くの人は好きになれないんですか?」

「・・・・、」

「その人と会えるんですか?」

「会えないよ」

「現実の人が相手だったら、私、あきらめます。だけど、そんなの、おかしい」

「ごめん・・・、」

千春は、ポロポロと泣き始める。

「千春ちゃん・・・」

 周りのクラスメートがじろじろと見る。

「分かったよ。弁当食べるから、泣き止んで」

 千春は、泣きながら、立ち去った。