翌日、千春が弁当を作ってくれる。
千春が来るのをタバコをふかしてまっていた。
ガタっとドアを開ける音と共に、千春が元気よくやってきた。
「せんぱ〜い。遅れてごめんね〜。くるとき、クラスの子に冷やかされたから」
「あはは・・・」俺は、笑うしかなかった。
千春は、「楽しみにしてましたか?」
「んー、ちょっと」と指を作ってみた。
「お母さんに教えてもらいながら、作りましたよ」
「それって、本当はお母さんが作ったとか?」
「えへへ。じゃあ、出すね」
見ると、かわいい弁当がきれいに並んでいた。
「おお、うまそ〜。じゃ、俺も出すね」と、お茶を2本出した。もちろん、購買部で買ったものだ。
「先輩、きがきく〜」
「お弁当には、お茶だもんな」
そして、クラスメートにどう茶化されたなどと話しながら食べた。
別れ際、千春は言った。「先輩、好きな人いますか?」
「うん。でも、遠いとこにいる」
「先輩、私、その人に負けませんから」
「千春ちゃん・・・、」
俺は、一人残された。
次の日、俺は、屋上に行かなかった。
ところが、放課後、俺のクラスに千春がきた。
「ち、千春ちゃん・・・」
「先輩、どうしてきてくれなかったんですか?」
「千春ちゃんの、笑顔を曇らせてしまうから・・・、」
「・・・、先輩、お弁当、無駄になるから、きてください。」
「千春ちゃん・・・」
「近くの人は好きになれないんですか?」
「・・・・、」
「その人と会えるんですか?」
「会えないよ」
「現実の人が相手だったら、私、あきらめます。だけど、そんなの、おかしい」
「ごめん・・・、」
千春は、ポロポロと泣き始める。
「千春ちゃん・・・」
周りのクラスメートがじろじろと見る。
「分かったよ。弁当食べるから、泣き止んで」
千春は、泣きながら、立ち去った。