教室に取り残されると、周りのクラスメートがざわざわと噂した。
俺は、お構いなしに、千春を追いかけた。
「千春ちゃん、待って」
「先輩、無理しなくていいですよ」
「そういうことじゃないだろ?」
「他にどういう意味があるの?」
「千春ちゃんが、心配だからだよ」
その言葉に千春は立ち止まった。
「少なくとも、先輩に嫌われてないんですね」
「当たり前だよ。嫌いなんていつ言った?」
千春はそれには答えなかった。
「先輩の好きな人ってどんな人ですか?」
「簡単に言えば、不良だな」
「不良が好みなんですか?」
「あ、まって、真似するなんてダメだよ?千春ちゃんは、千春ちゃんの良さがあるんだ」
「私の良さ?」
「一生懸命な所だよ」
「先輩、私を見ていてくれたんですね」
「あは、一応、好みだから」とポリポリと頭をかいた。
「先輩? 明日もお弁当作ってきていいですか?」
「もちろんだよ」
千春は微笑んだ。