空の時 9


 

  教室に取り残されると、周りのクラスメートがざわざわと噂した。

俺は、お構いなしに、千春を追いかけた。

「千春ちゃん、待って」

「先輩、無理しなくていいですよ」

「そういうことじゃないだろ?」

「他にどういう意味があるの?」

「千春ちゃんが、心配だからだよ」

 その言葉に千春は立ち止まった。


「少なくとも、先輩に嫌われてないんですね」

「当たり前だよ。嫌いなんていつ言った?」

 千春はそれには答えなかった。

「先輩の好きな人ってどんな人ですか?」

「簡単に言えば、不良だな」

「不良が好みなんですか?」

「あ、まって、真似するなんてダメだよ?千春ちゃんは、千春ちゃんの良さがあるんだ」

「私の良さ?」

「一生懸命な所だよ」

「先輩、私を見ていてくれたんですね」

「あは、一応、好みだから」とポリポリと頭をかいた。


「先輩? 明日もお弁当作ってきていいですか?」

「もちろんだよ」

千春は微笑んだ。