帰ったら、トンカツを食う2
その頃、私はあることに悩んでいた。
そう、それは男性恐怖症だった。自分がなぜ、男性恐怖症なのか分からない。そして、これは、男女共通して自分に触れられるのが嫌だった。原因不明の鳥肌まで出た。
男性に包まれたいと思いながらも、同じ女性に惹かれていた。
でも、そんなこと誰にも言えるはずもなく、ただ悩む一方だった。
そのことを忘れるために、稽古に打ち込んだ。打ち込んでいる間は、忘れられるから。
その時、稽古場では、演技で人に触れられることが多かった。
いつもの私なら、鳥肌がたつだろうけど、演技していると苦痛ではなかった。だって、自分とは違う人物になっているのだから。
ただ、休憩中も触ってくる。それが、苦痛で、でもみんな、触ってくる。
私は「や、やめてくれ〜。触られるの苦手なんや〜」
すると、いたずら好きのがんちゃんは、「なんでや〜?」と私の上にのしかかってくる。
「やめてくれ〜」
その上に竹内がのしかかり、甲元さんがのしかかってきた。
「うう、おもい〜」
ひとしきり、そんな遊びが続いた後、腕を見ると鳥肌でいっぱいだった。
竹内は、「なんで、鳥肌なん?」
「いや、触られるの苦手やねん」
それから、何日か過ぎた。どれくらい稽古しただろう?
やっと形になった頃に、竹内の姉が昔、演劇をやっていたとのことで演出を頼むことにした。
すると・・・、「あかん、あかん、ここは、もっと、自然に言うの」
私は、ぺこぺこと頭を下げた。
竹内の姉は、下手とは言わなかったけど、徹底的に私に指導した。
だが、私は、それについていけずに、途方に暮れていた。
悔しかった。自分の実力のなさと、努力していない自分が情けなかった。
竹内とがんちゃんは、自分達のシーンをオリジナルを入れて、面白いシーンが出来上がっていた。
私は、焦った。でも、焦ったところで、何をするか分からなかった。
それまで、私は、オリジナルで何かをする。ということをしたことがない。
先生や先輩の言うとおりに過ごすことに慣れすぎていた。
そのことを甲元さんに相談することもなく、自分は下手だ。と思い込んだまま。本番の日が近づいた。